勝手にレビュー35:B'zの17thアルバム『MAGIC』

10年前のアルバムという事実がマジック。

B’z『MAGIC』 2009年11月18日


1. Introduction 1 / 5 点

曲名通りインスト。すぐ終わる。


2. DIVE 4 / 5 点

B’zダサカッコイイの極地。
ふざけてるのか大真面目なのか、とにかくサビの「ラララララ」が衝撃的。
暑苦しいおっさんが「ラララララ」と何回も叫んでいる曲のはずなのに、それでもかっこいいのが意味不明で笑える。
そうだ、B’zって当時すでにおっさんだったはずだ。なのにこうして言葉にしなければ、「あいつらはおっさん」だとは意識できなかった。 そのことが笑えるし、畏ろしい。

できることできないことが そんなあっさりわかるの?


3. Time Flies 4 / 5 点

マイケル・ジャクソンのパクリ。
怠け者の心の内を、何かを刻み込むようなリズムで荒らしに荒らしまくる曲。こういうのほんと勘弁してください。
ピンク・フロイドの「Time」を連想させる。あれもかなりのトラウマ。

できることは全部やった 無理やりそう思いたいだけ


4. MY LONELY TOWN 4 / 5 点

群衆の中での孤独をドラマティックに歌う。わずかに共鳴しあえるか細い線こそを大事にしようというテーマは、後述する「イチブトゼンブ」とも共通している。
繋がっているようで、繋がっていない。
神林長平の『ぼくらは都市を愛していた』を彷彿とさせる。あちらの題意は「都市は、社会的動物であるはずの人を独りで生かすことを可能にする巨大機械」といったもの。

探してる そっと 何もかも 見せあえる もうひとりの自分を


5. long time no see 3 / 5 点

再会を祝う歌。と見せかけて、普段から日常的に接している人物とも、知らなかった側面を見つけて日々「出会い直す」という歌。
ところどころ歌詞がえっち。

あくまで ビギナーでいるくらいの 心意気です


6. イチブトゼンブ 4 / 5 点

もうすっかり代表曲な扱い。
「ブザービート」放送してた当時は、普段B’zを聴かないような連中もB’zを聴いていた。一瞬だけ。
もろに青春臭くて売れ線狙ってるのバレバレなメロディだが、歌詞はかなり切実。
決してすべてをわかり合う必要はない。わからないままわからないでいよう、という歌。なんか『娶』のレビューの時に似たようなフレーズがあったな。
B’z軍団の元凶。赤チェックって、いい感じにオタク臭くていいですよね。

愛しぬけるポイントがひとつありゃいいのに


7. PRAY 3 / 5 点

バラード。無駄に壮大ではないので、さらっと聴ける。
稲葉ソロの「とどきますように」と似た感じの歌詞。
繋がっていないようで、繋がっている。それは意識しないと気づきにくい。

今日もどこかで だれかが だれかのために祈る


8. MAGIC 2 / 5 点

マンネリ打破に四苦八苦する男の歌。古参ファンに対するB’zからのメッセージという側面もあるかもしれない。
表題曲にしてはパンチが弱いのが残念。

驚きが途絶えると 次の誰かを品定めする


9. Mayday! 4 / 5 点

終始、焦燥感を煽ってくる歌詞とメロディ。
夏休み終了直前で宿題を溜め込み、それでも焦るだけで何もしないダメ人間の心情を的確に表現する。
なんというか、破滅願望が見え隠れしているような感じ。にっちもさっちも行かない状況に自ら進んでいくのを楽しむというか。
本当は救われたくなどなく、堕ちるところまで堕ちる。一度この性癖を自覚してしまうと、もう止まらない。

近づく悲劇に 開きなおってる


10. TINY DROPS 2 / 5 点

死に別れた人物に向けたメッセージ。
魂を滴に、あの世を海に例えている。普通は空に登っていくイメージを想像するが、ひねりを加えているのが稲葉らしい。
鶏声には静かなバラードは合わないのが惜しい。もうちょい声低めに歌ってほしい。

たゆたう海へ


11. だれにも言えねぇ 4 / 5 点

ラテンあり、メタルあり、ラスサビ前の不意打ちありと、色々ごった煮な曲。
その割には流れるようにメロディが進行し、違和感が全くない。表題曲よりよっぽどマジック。

ありえないと言いながら いつかこうなる日がきますようにと 強く願っていたんだ 人のせいにゃできないだろう


12. 夢の中で逢いましょう 5 / 5 点

歌謡ロック。
過去の恋人と夢の中でイチャイチャしようと目論む、悲しいほどに滑稽で無謀な曲。
稲葉は非モテのトラウマを抉るのが本当にうまい。こちらもわざわざこういう曲ばっか聴き込んじゃうというのは、私は実はマゾなのでしょうか。

いくつもの「もしも」ばっか 馬鹿じゃないの


13. Freedom Train 5 / 5 点

「真の自由主義とは、自分自身で定めた法に遵守すること」といったような内容を、先生の授業だか何かの本だかで聴いたことがある。
この曲はその言葉を体現しており、ストイックでシリアスな歌詞を派手なメロディに乗せている。
今のまま突き進むもよし、別の方向に切り替えるもよし。ただし引き返しはできず、選択肢がいくら多かろうが同時に選べるルートは常に一つのみ。
言われてみれば当たり前のことだが、稲葉はそれを思い出させてくれる。自分に忠義を尽くせるか?

不満なら降りればいい スピードが鈍るからね


総評:3 / 5 点

結局のところ都合の良い魔法なんてあるはずがなく、自分で能動的にアクションを起こさないと見えているものも見えなくなる。月並みな結論だけど、それを厳しく提示するアルバム。
今回、Markdown記法なるものを試してみた。Spacemacsのmarkdownレイヤーを有効化し、.mdファイルで編集する。エディタで編集してるときでも文章が見やすい。ただし、改行が面倒なのが難 点。