勝手にレビュー30:B'zの14thアルバム『THE CIRCLE』
クソ寒いっすね。
B’z『THE CIRCLE』2005年4月6日
1. THE CIRCLE 4 / 5 点
民族音楽的な導入曲。
太陽神に祈りを捧げる。さあ、跪け。
破滅と再生の技を 今こそ未知の力を われらに与えておくれ
2. X 4 / 5 点
ハードロック。
念仏じみたAメロ・Bメロから、ドラマティックなサビが展開される。
神秘的で仏教臭い歌詞なようで、よく聴けばいつものポジティヴ稲葉。
生きている限り、自分に何が起きるかはわからない。死なない限りは負けではない。
無限の可能性 未知の未来 神さえ予想不能 己が今を変える
3. パルス 3 / 5 点
高速テンポのロック。
極限状態の中でも屈しない人間の心情を描く。
稲葉自身は、2004年の新潟県中越地震で空洞に閉じ込められた少年を念頭に置いて作詞したようだ。
もう何回も書いているが、テーマこそ作者によって固定されているものの、実際の歌詞が良い感じに抽象的なので、聴き手に自由な解釈が許されている。
いつもは考えない なのになぜか今やりたいことだらけなんだ
4. 愛のバクダン 4 / 5 点
パンク・ロック風。
非常にキャッチーでポジティヴなメロディが、聴き手のテンションをどストレートに昂らせる。
悲しみに満ちている世界に愛のバクダンなるものを降り注ぐという、ぶっ飛んだ歌詞。
今こそ手をあげ戦うべきは 世界を覆いつくすJealousy
5. Fly The Flag 4 / 5 点
中速テンポのロック。
リズムを一つ一つ確実に刻み込むかのようなメロディが心地いい。
人生を荒波に例え、それを乗り越えようと航海する様子を描く。
「名もない旗」という表現が実に良い。しぶとくさりげなく生き残ってやる、という決意をうかがわせる。
ぶっこわれそうでもやぶれてしまいそうでも 名もない旗をかかげろ
6. アクアブルー 3 / 5 点
女性目線の不倫曲。
不義理を働く自分を哀れむ主人公がどうしようもなく身勝手で、それがどうしようもなく愛おしい。
裏テーマは弱い立場への負の連鎖で、個人と社会を往復しながら連想させる歌詞。「何ひとつ見てないで正義や大義ふりかざす哀しみ知るべし」にはドキリとさせられる。
これが、世界の真実の色なのか。
知らないことばかりでこの星はまわってる どうしようもないわけでだれもが泣いている
7. 睡蓮 3 / 5 点
和バラード。
ブッディズム稲葉が睡蓮の池の側で、この世の無常をしみじみと謳う。いとあはれ。
ギターがめちゃんこ美しい。松本の本領発揮。
燃えつきてもいい そんなふうに生きよう
8. Sanctuary 5 / 5 点
ドラマティックでシリアスなハードロック。
セム系の宗教を彷彿とさせる神秘的な歌詞。
何者でもない僕が聖地巡礼の旅へと発ち、超越的な存在をその身に感じることで勇気を湧き上がらせるという描写。
Come on ぶちこわせるかい Come on 全部なくせるかい Hello 僕だけのサンクチュアリ Hello Hello
9. Fever 4 / 5 点
ライブでの興奮とエロを絡めた曲。
ねちっこくてひどくヤラシイ歌詞が、鼓膜を滾らせてくる。
「そしたらまた一歩 未開の土地に踏みこむ」にはわろた。
ギターリフにものすごい既視感を抱く。これ、元ネタなんだっけ……。
はじらいもためらいも リズムにのってとんで消える
10. 白い火花 4 / 5 点
稲葉が得意中の得意とする、卑屈な人間の背中をビシバシひっぱたく応援歌。全力を出し切って火花のように散れ、と諭す。
相変わらず歌詞の組み立てが非常にうまく、非の打ち所がない。
ドラムの力強さが映える曲。
笑いな笑いな 過去も未来も理想はたったひとつじゃない
11. イカロス 4 / 5 点
ミディアム・バラードかと思いきや、サビで勢いが一気に加速する。
「とりあえず一歩踏み出す勇気」をイカロス神話になぞらえ、聴き手にエールを送る。
サビで畳み掛ける高いテンションが良い。
やってみせろ もう遅いなんて誰にも言わせない
12. BLACK AND WHITE 4 / 5 点
沖縄民謡+ゴリゴリハードロック。
その独特の組み合わせゆえ、初見だとほとんどの人がこれは……ないわという感想をこぼすだろう。僕もそうだった。
導入部の、深淵から響き渡るかのようなシャウトが神がかっている。
なんでもかんでも白黒はっきり線引きすることに、稲葉なりの疑問を投げかける。白と黒の間に選択肢はもっとあるだろと。
サビの歌詞が若干イマイチなのが非常に惜しい。もう少し練っていたら、間違いなく化けた曲。
永遠に続く憂いの理由は 自分自身だと最期まで気づかないまま
13. Brighter Day 4 / 5 点
今作の王道バラード枠。
全英詞ロックバラード。オリジナルが全英詞なのは今までになかった……はず(デモ曲除く)。
尽きかけた魂の火を再び燃え上がらせようと立ち上がる。地平線に落ちていく夕日と対比させた描写が美しい。
The past it taught me to live. Now it is time for me to change.
総評 : 4 / 5 点
B’z流シンプル・ロックの最高峰。
ただシンプルなだけでもなく、えらく宗教的・民謡的な要素もいくつか織り込まれている奇妙な作品です。