勝手にレビュー26 : B'zの13thアルバム『BIG MACHINE』

最近、思うところがあり、「自己分析」なるものに手を染めています。「学生でもないのに血迷ったか」という声が聞こえてきますが、学生のうちにするべきことをしてなかったのが、今になって響いてきているのです。学生の方は僕みたいにサボらないようにしましょう。

それにしても、自己分析ってえらく労力のかかる作業で驚きました。
なにせ自分の幼少期から現在に至るまでの思考・行動を、当時の記憶を掘り起こしながら列挙していくのですから。
しかも、それらを、心理学やら人文学やらの付け焼き刃な知識でもって分析していかなければならない。
気分はもう、鏡を見ながら自分の身体をかっさばいていくブラック・ジャックです。

今作は、しばしの間ソロ活動に勤しんでいたB’zの二人が合流したのちの作品です。
前作『GREEN』より打ち込みは控えめとなり、バンドサウンドを主軸に置いています。

B’z『BIG MACHINE』2003年9月17日


1. アラクレ 3 / 5 点

キャッチーなロック。
刺激を求める人間の本性を描く。ストレートにかっこいい。
『あなたの隣に誰かいる』というドラマのOP。ゴールデン枠にしてはエログロ表現が強い作品だった。

真っ赤な心臓は理性を超えて鳴るよ


2. 野生のENERGY 2 / 5 点

中速テンポのポップ・ロック。
誰からも必要とされない人間がもがき苦しみ、全てを捧げてもいいと思えるような何かに出会う、という歌詞。
人生観を劇的に変える「運命の出会い」を描写している歌詞は素晴らしい。
しかし、メロディがかなり微妙。稲葉の甲高い声も、こういう曲にはマイナス要素でしかない。

何やっても驚くほどまわりについてゆけず 夢中になれるものを見つけても叩きのめされる


3. WAKW UP, RIGHT NOW 1 / 5 点

安っぽい曲。ダメだこりゃ。


4. 儚いダイヤモンド 5 / 5 点

疾走感の強い曲。
勢いのあるメロディに対して、歌詞は、もはや手遅れな状況に追い込まれた人間を描く。
目先の利益に躍起になり、他のものをおざなりにしてきた人間の悲痛な叫びが聞こえてくるかのよう。
こういう、メロディと歌詞に大きなギャップがある曲には、採 点が甘くなってしまう。

自分で一番嫌いなタイプになっていると 気づかないでいる僕の体たらくを笑えよ


5. I’m in love? 4 / 5 点

ポップ・ロック。
切ない片想い曲。主人公が臆病なのがいじらしい。
誰もが経験するであろう日常体験を、稲葉は非常に上手く言語化し、曲に落とし込む。

カレンダーがぱらぱらめくれていっていつしか興奮も冷めるだろう でももし今日という日でこの世界が終わるとしたらみんなどうするの?


6. IT’S SHOWTIME!! 2 / 5 点

B’zのライブをそのまま表現したかのようなメロディと歌詞。
まあ言ってしまえばそれだけの曲。ライブをテーマとした曲はいくつかあれど、この曲が一番微妙な出来。良い歌詞はちらほら見受けられるのだが……。

虚しさに嘖まれるキミが欲しかったのは臨場感 人の気持ちつかめないボクに足りないのは想像力

7. 愛と憎しみのハジマリ 3 / 5 点

打ち込み主体の暗い曲。
歌詞は、愛憎の多面性を描いている。
Aメロは「世界」を、Bメロは「個人」を、というふうに行ったり来たり連想させる仕組みの表現だが、稲葉にしては展開がやや強引。
なぜか懐かしい気持ちになる曲。

何十回もおんなじような大失敗を繰り返すように人類は誰かにプログラムされて一生懸命今日も生きてるの?


8. BIG MACHINE 2 / 5 点

中速テンポのロック。
今作の中では、重い部類に入るか。
いつもな感じの応援歌。B’z自身のことを歌ってるとのこと。
きつい言い方すると、マンネリ感が否めない。

善悪を飛び越えろ 哀愁のBIG MACHINE


9. Nightbird 4 / 5 点

重いバラード。
久々の不倫ソングで興奮してきた。いや、もう不倫しているというよりは、これから略奪愛に走ろうとする男を鳥に例えた歌詞か。
メロディが美麗かつ壮大。松本も稲葉も、こういう曲作らせたらまったくマンネリしないんだからすごい。

乱れる海のような心 惨めなら 紅蓮の炎に焼かれよう思い切って


10. ブルージーな朝 4 / 5 点

曲名通り、ブルージーなジャズ。
『FRIENDSⅡ』の頃のようなアダルトな雰囲気の曲。
女性目線の歌詞で、気だるげな無力感を見事に表現している。
稲葉の高音も、この曲ではプラス方向に作用している。

なんとなく探すのは 人の常 不幸な話題


11. 眩しいサイン 3 / 5 点

ポップ・ロック。
ウジウジしている人間の背中を、優しげに後押しする歌詞。
7曲目と同じく、理由はわからないが懐かしい気分になる曲。

大人びた優しが臆病だとバレる前に 才能以上速くまっしぐらに愛せ


12. CHANGE THE FUTURE 3 / 5 点

独特な雰囲気の打ち込みロック。
歌詞は、環境問題について。現在の地球を「未来の人類から借りたもの」というふうに表現している。
メロディも歌詞も半端なくかっこいい。それだけに、サビの物足りなさが非常に痛い。

いつの日か産声をあげるあなたに借りた世界 今がすべてと僕は荒らし放題使い果たしてしまうのか


13. ROOTS 5 / 5 点

王道バラード枠。
悲しくも、一筋の希望に満ちたメロディが流れる。
離散した民族の悲哀を表現する歌詞。東西ドイツ、南北朝鮮、ユダヤ人、国境線をでたらめに定められたアフリカ人など、いろいろ思いつく。
稲葉の、他人の痛みに対する想像力がピカイチに光っている曲。

誰もが同じものを同じとき同じように愛せないけれど 今はまだ泣かないで いつか会える日のために


総評 : 2 / 5 点

それぞれのソロ作品は素晴らしいのに、B’zになるとなぜか迷走感の激しい作品になってしまう時期が続きます。
個人的には「いっその事、4曲目と後半の暗い雰囲気の曲だけで構成しておけばよかったんじゃないか?」とも思います。
次回は番外編です。ゆとり世代には荷の重い作品をレビューします。