勝手にレビュー23 : B'zの12thアルバム『GREEN』

ここ数日、ゼミの同期や自分自身の卒業論文をチラチラ見返していたのですが、「あいつ嫌な奴だったけど、文章だけは好感もてるな」とか「俺の論文書き直してえ。あの話とかこの話とか今ならポンポン思いつくのに」とか考える次第です。

で、ゼミ生同士による互いの卒論に対する感想文なんかも手元に残してあったり。自分の卒論へのコメント見てたら、(本音はどうあれ)良いこと書いてくれてたりして嬉しくなるとともに、勇気付けられたりします。
20代前半の大学時代に根源的なことを考えることができたという効用は、おそらく僕がもっと年老いていったらさらに実感できるのでしょう。だから、いるかどうかはわかりませんが、この文章を見てる大学生の方は卒論がんばっときましょう。今の自分が、10年後20年後の自分を支えてくれるのですから。って先生が言ってました。

冬の入口というこの季節に、夏がテーマのアルバムのレビューやります。今作は『IN THE LIFE』以来の、打ち込み主体のデジタルサウンドがひしめくアルバムです。ただ、当時とは違って、松本のギターや稲葉の甲高い声によって、全体的に暑苦しい曲が多いです。

B’z『GREEN』2002年7月3日


1. STAY GREEN 〜未熟な旅はとまらない〜 3 / 5 点

B’zのお家芸ロック。
Aメロ→Bメロ→サビの順に、少しずつ激しさを増していく構成。こちらのテンションを静かに昂らせていく。
歌詞は、良い意味での「子供っぽさ」を保持していこう、というもの。それは「オトナになれよってボクを見下ろすけど笑えるよ こだわり捨てていっただけだろ」などの表現に象徴されている。

まだまだある学ぶこと 神秘に満ちた世界を行こう


2. 熱き鼓動の果て 3 / 5 点

暑苦しいロック。
開幕から甲高い稲葉の声が鳴り響くのは、マイナス要素。普通にAメロから始めたほうがよかった。
歌詞は多分、ライヴで会えるファンとの楽しみを表現していると思う。なんにせよ、ライヴで聴いたほうがカッコイイ曲なのは確か。

圧倒的孤独を味わいつくして 細胞はその目を覚まして輝きだす


3. Warp 4 / 5 点

これまた夏要素満載の、爽やかデジタル・ロック。
ストレートなラブソング。昔の恋人と再会し、当時の愛情が復活していくという歌詞。
愚直なまでに甘酸っぱいこの感じは、B’zとしては逆に新鮮。
君さえよけりゃ あの時の答えを今言うよ


4. SIGNAL 3 / 5 点

バラード。
「プアンプアン」というメロディで、不思議な雰囲気が爆発している。
倦怠期から脱しようとしている二人を、信号機に例えながら描く。
『ときメモ』のOPに採用されたことは、B’zマニアの間ではあまりにも有名。

一緒にいられることだけ望んでいたのに 満たされるほどにちょっとした恥じらいも消える


5. SURFIN’ 3000GTR 1 / 5 点

個人的に、B’z史上最も印象の薄い曲。
響くものが何もないサーファー・ソング。


6. Blue Sunshine 4 / 5 点

ミディアム・ナンバー。ドライヴ・ソング。
爽やかなメロディとは裏腹に、歌詞は片思いの相手を車でどこかに送り届けるという切ないシチュエーション。

急にRadioが暗い事件を伝え わかりあうことの難しさを思い知る


7. ultra soul (Alternative Guitar Solo ver.) 2 / 5 点

あまりにもアレなネタ曲。今のB’zといえば、これが代表曲か。
小学生レベルの曲名に熱すぎるテンションと、とにかくインパクトがとてつもない。
でも、こういう曲には打ち込みはあってないのではないか。実際、ライブや『C’mon』収録の再アレンジはドラムサウンドでかっこいいし。

ホントだらけあれもこれも その真っただ中暴れてやりましょう


8. 美しき世界 3 / 5 点

スロー・バラード。
打ち込みがペラペラなせいで、曲の魅力が半減している。
気だるげな情景描写がナイスだから、余計に惜しい。
4曲目に対して、こっちはEDで採用。恋愛ゲームとB’zという組み合わせは、なかなかにシュール。いや、むしろ「らしい」と言えるか。

何も手を打たず ただ日々を見送るだけ


9. Everlasting 4 / 5 点

王道バラード枠。今作唯一のストリングス曲。
『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』のEDで有名。今から思い返せば、あの映画はコナン初のサイバーパンク作品なんじゃないか。ちょっと違うか。
曲自体は良いのに、バラードを2曲連続で並べるという、B’zの悪いクセが出ている。どうにかなんないのかこれ。

君に出会えたその時から もうひとりじゃないと思えたんだ


10. FOREVER MINE 2 / 5 点

デジタル・ロック。
この曲も例にもれず、打ち込みが安っぽい。
所有物扱いしていた女に逃げられた男が、反省して再起を図る、という歌詞。

忘れられない ボクを奮い立たす青臭いフレーズ


11. The Spiral 5 / 5 点

ピアノ+デジタル+ロック。
怪しい雰囲気で満ちている、不思議な曲。ピアノとデジタルとギターと稲葉の声が絶妙に絡み合い、わけわかんないサウンド空間を作り出す。
歌詞は、負の連鎖から抜け出そうともがく人間を、稲葉の抽象的な歌詞で表現している。稲葉の日常の世界観が垣間見える。
なんだか安部公房みたいな歌詞で、意味がわかりそうでやっぱりわかんない。言葉に翻弄されている感じがたまらなく良い。頭悪い文章でごめんなさい。

やばい時計の針が進んでも世界は終わらない


12. GO★FIGHT★WIN 3 / 5 点

暑苦しいデジタル・ロック。
ものすごいDQN曲に聴こえるが、実は「見せかけの平和」の中での戦いについて歌っている、ような気がする。
てか、『GO★FIGHT★WIN』って。『★』って。

でもきっと そりゃ誰のものでもない 僕がにらむべき敵は僕の中


総評 : 2 / 5 点

「いちいち打ち込み主体にする必要あったか?」って考えてしまう曲の多い、残念な作品です。『GOLD』や『ultra soul』のB面に、もっとアルバムに似合う曲はあったのですが。ただし、11曲目に関しては例外で、あれこそB’zの新たな境地と呼ぶにふさわしい曲です。