勝手にレビュー21 : B'zの3rdベストアルバム『B'z The "Mixture"』

来たる11月29日にB’zの最新アルバム『DINOSAUR』が発売される。果たして、それまでにB’zと稲葉浩志の全アルバムのレビューを書き終えることはできるのか。

残された時間は23日。1日1レビュー書いたとしたらいけるんじゃないか?

B’zのオリジナルアルバム : 9作
B’zのベストアルバム : 5作
稲葉のオリジナルアルバム : 5作
稲葉のシングル : 4作
計 : 23作

ギリッギリだな。でもちょっと待てよ。確か、いつぞやの記事でB’zのB面は後日まとめてレビューするっつったよな?とすると、最低でもあと24作分。あ、だめだこりゃ。

このベストアルバムは、B面曲の再録のほか、B面曲のリミックス(音の振り分けを変えただけ)と初期のアレンジ曲(メロディは同じだけど、演奏法やら歌唱法やらをまるっきり変えたやつ)で構成されており、曲名の後ろにはそれぞれ「Mixture mix」、「Mixture style」と名付けられています。この記事では、分かりやすいように(めんどくせえから)アレンジ曲にだけ「-Mixture style-」と付記しておきます。
なお、過去のアレンジ曲が何曲かあるという都合上、レビュー済みの文章をセルフ・パクリかましていますが、知ったこっちゃないのでご了承ください。

B’z『B’z The ‘‘Mixture’’』2000年2月23日


1. だからその手を離して -Mixture style- 1 / 5 点

1stアルバム収録曲のアレンジ。原点回帰。
かなりハードロックなアレンジがなされているが、元の出来がアレなので、もうどうしようもない。


2. YOU & I 5 / 5 点

デジタル+ブラス+ロック。
好きな人の前では引っ込み思案になる非モテ男の悲哀を描く。メロディは90年代中期のB’zの黄金パターンだが、歌詞は卑屈で稲葉ソロに近い。
「あなたがいなけりゃ あとは寂しさに耐えればいい つまらない 毎日を 送ればいい」
なんてアホみたいな強がり。泣けるわ。

つきあいがいがありすぎて 身も心もくたくたになる


3. OH! GIRL -Mixture style- 4 / 5 点

2ndアルバム収録曲のアレンジ。デジタル+ロック。
稲葉の歌唱力が以前とは格段に上昇し、バックの演奏も華やかになっている。

いろんな男にいつも誘われるだけ誘われて ついていかない君が一番好きだよ


4. NEVER LET YOU GO -Mixture style- 4 / 5 点

2ndアルバム収録曲のアレンジ。演歌ロック。
「君に仕事で会うまえにもう僕は ちっぽけな平凡を選んでたよ」などの歌詞からわかるように、重い不倫曲。
3曲目と同じく、稲葉の声が洗練されているので、見事に名曲に昇華された。

Never let me back 『愛してるよ…!』


5. JOY 4 / 5 点

叙情的なミディアム・バラード。
今はもうふさわしい相手がいるであろう元恋人を想いながら、喜びに満ちた夜を過ごす、という歌。
解釈のしようによってはものすごいアレな感じなのに、稲葉が歌うとこんなにも素敵な曲になるのだから不思議。

闇をさまよう星が世界の半分を埋めて 街をはなれてひとりどこまで行こう


6. 今では…今なら…今も… -Mixture style- 3 / 5 点

3rdアルバム収録曲のアレンジ。中華+ミディアム・バラード。
元恋人と街角ですれ違うが、それに気づいているのは自分だけという、まあできすぎた漫画のようなシチュエーション。
やはり稲葉の声が良いので、原曲よりこっちのほうがよろしい。

後悔したいくらい綺麗になってる君の 聞き覚えのある声だけ聞こえてくる


7. 孤独のRunaway -Mixture style- 4 / 5 点

3rdミニアルバム収録曲のアレンジ。原曲よりもさらにハードロック色が強い。
新たな環境に挑戦するために、今までの居場所を思い切って切り捨てるという歌詞。
当時よりも稲葉の声がいい感じに枯れており、青臭く夢にがむしゃらな原曲、年を食った中年の回想録的なこちらのアレンジ曲、というふうに聴き比べて楽しむことができる。

愛を殴ってみよう 義理を蹴飛ばしてみよう 傷ついて憎まれてもいいから


8. MOVE 4 / 5 点

暑苦しいハードロック。
歌詞もやはり暑苦しく、卑屈な人間のケツを猛烈にぶっ叩くかのような歌詞。
電車の中でこの曲聴きながら、しんどい部活に行ってたなあ。結局辞めちゃったけど、あの1年間よく発狂しなかったなと自分を褒めてやりたい。

ひとりよがりの悩みなど ほうり投げたら醜態を見せよう


9. 東京 5 / 5 点

重く、渋いバラード。
上京した男の希望と絶望がにじみ出る歌。三人称視点で歌詞が書かれているが、主人公の「男」というのは、若かりし頃の語り手なのだろう。
直接語られてはいないものの、優しい「君」をないがしろにしたことを主人公は激しく後悔しているのだろう、というのが読み取れる。
ラストサビの盛り上げが鳥肌立つ。文句なく名曲。

幸せの意味を失くして彷徨っている人々の群れ 誰もまた歩き続ける戻れぬこの道を


10. hole in my heart 5 / 5 点

お気楽ロック。
陽気なメロディに切ない歌詞を乗せるという、B’zではよくあるパターン。
カップルの「我」が妥協に至らず、関係を解消するという結末。
「憎みあうわけじゃないのに」不幸になっていく人間の悲哀。コミュニケーションの下手くそな奴がこの曲聴くとトラウマがほじくられる。僕は似たような経験してこじりにこじって立派な他人恐怖症になりました。

押し付けられてると感じたらもう我慢できない 僕と似てるから痛いほど気持ちがわかるよつらい


11. KARA・KARA 3 / 5 点

明るめのブラス・ロック。
「真面目で良い人」を卒業し、本能におもむき始める男を描く。

出会ったことを 悔やみたくなるくらいにイカれてるよ


12. FUSHIDARA 100% 5 / 5 点

曲名通り、ふしだらなハードロック。
B’zには数少ない女性目線の歌。声の甲高さと相まって、オネエ稲葉を堪能できる。
ナルシストな男の目の前にニンジンをぶら下げながら、ケツをひっぱたくかのような歌詞。
個人的には、もっと女性目線の歌をガンガン作って欲しい。この曲とは少しシチュエーションは違うが、見た目は女なのに、声は低音ヴォイスの男っていうのが自分にはすごく滾るのだ。
オタクな例で申し訳ないが、『HELLSING』の「ロリカード」とか、『NieR:Automata』の「N2、概念人格」とかがソレに当たる。あ、どっちの声優も中田譲治やんけ。とにかく、この「見た目は女、声は男」という「Trans Sexal Fiction(性転換モノ)」じみた状況に興奮するので、B’zも頑張って(?)ください。

金愛心体この星じゃ全部つながってる


13. ビリビリ 5 / 5 点

デジタル・ロック。
中速テンポで、一聴しただけでは、曲の地味さだけしか印象に残らない。
だが、歌詞のほうが、これまた非モテで社会不適合者のトラウマを抉ってくるのだ。
2曲目と同様のこの内省さ加減は、B’zよりかは稲葉ソロ的。

でもどうしてでも僕は帰ろう いくじなしやろうになりさがろう バイバイ


14. Hi 2 / 5 点

中速テンポのロック。
13曲目と違って、こちらは本当に地味。B’zマニアでもこの曲の存在を忘れてる人がいそう。
歌詞は決して悪いわけではないのに、なんとも言えない影の薄さがすごい。

酔いつぶれて自由を謳うわりには 僕ときたらルールからはみだせない


15. The Wild Wind 4 / 5 点

渋い演歌ロック。
この曲のPVでもそうだったが、深夜のアジアンな繁華街にふさわしい曲。ハードボイルド。
歌詞は、別れた恋人への想いを募らせつつ何処かをさまよう、というもの。

街を歩いて手軽な物語探して 傷付かないように僕らは生きてたのに


16. あなたならかまわない 4 / 5 点

当時の完全新曲。シンセが地味に活きているハードロック。
Aメロはゆったり流れ、Bメロの歌詞は高速でまくしたて、サビで一気に盛り上がるという構成が印象的。
歌詞は、互いの醜い本性をもっと見せつけ合おうと提案する、というもの。稲葉ソロの『愛なき道』に似ている。
「あなたならかまわない」というセリフを放つ人物がいつのまにか入れ替わっているのが、もはや職人芸。

きっと純愛というのは相手をめちゃくちゃにしてやりたくなる気持ちだろうな


17. Raising River 3 / 5 点

シークレット・トラック。
次作の11thアルバムに収録されている同名曲のデモ・バージョン。
メンバーは松本と稲葉のみで、1番のサビまで演奏。全英詞。こちらの荒涼とした感じもオツなもんですわ。
期間限定のインターネットサイトからでしかダウンロードできなかった代物であり、2017年現在ではもはや入手不可能。え、「文章に違和感がある」ですって?……気のせいでしょう。


総評 : 4 / 5 点

「メジャーな代表曲なんて知ってて当然、通はやっぱ『パール盤』持っててこそだろ」というニッチ層ぶりたい人におすすめの作品です。
次回からのB’zの作品は、残念ながら曲の出来にかなりムラが出てきます。こうした傾向が続くのは、だいたい2007年の『ACTION』あたりまでです。