勝手にレビュー15 : B'zの9thアルバム『SURVIVE』
90年代の音楽を聴いていると90年代に生み出された商品を連想してしまいます。そこで改めて思ったのですが、プレステ1には神ゲーが多いですね。 サガフロンティア、聖剣伝説LOM、クロノ・クロス……って、スクウェア作品ばかりになってしまった。
惜しむらくは、これらの作品を成人してからプレイしたということ。子供の頃にやっておけばもっと感受性豊かな人間になれたのになあ。でも、当時はプレステを大人用のゲーム機だと認識していて、64とゲームボーイしかやってなかったのです。プレイも下手くそだったし(ポケモン緑を親にクリアしてもらうというレベル。マリオ64なんかはトラウマのバーゲンセール)、プレステのRPGなんてやってても右往左往で詰んでいたことでしょう。
稲葉と松本のつかの間のソロ活動が終わり、再度B’zとして合流した後のアルバムである『SURVIVE』は、10周年を1年後に控えた作品ということもあり、これまでのB’zの集大成としての存在感を放っています。デジタルありロックあり歌謡曲ありブラスありと、ごちゃまぜなのになぜか統一感のある作品です。
ですが今作は、B’zがハードロックの先鋭化を図り始めた時期の作品ということがB’zマニアの間では了解されており、ここから3作に渡ってゴリゴリの演奏が展開されていくことになります。
B’z『SURVIVE』1997年11月19日
1. DEEP KISS 4 / 5 点
ハードロック。
心臓をイメージさせるサウンドからのギターリフ&稲葉の高笑いで開幕。
卑屈ながらも根性のあるダメ男が主人公なので、やはりB’zは前回の稲葉ソロとは世界観が大幅に違う。
B’zの曲の中でも稲葉の声が非常に高音で、聴き手を昂らせる。
最高の人が待ってるよまだまだ チャンスは巡り巡って 黙って研ぎ続ける才能 ナイフのように
2. スイマーよ!! 4 / 5 点
打ち込み主体のデジタルロック。
人生を水泳に例えた歌詞が秀逸な応援歌。このアルバム随一の疾走感と爽やかさ。
あふれこぼれる 嘆きを唄声に 魔法じゃない じゃないけどできるよ
3. Survive 4 / 5 点
ロックバラード。
哀愁漂うメロディに、曲名通り「生き残る」ことの苦しさ、尊さを語る。
ただ単に生きるのではなく、生き「残る」のが重要で、作品でも芸能界でもなんでもそうだけど、長期に渡って市場の目に晒されつつ、それでも一定以上の評価がなされるというのは、それだけの価値があるということであり、だからこそ「古典を学びましょう」と先生に教えられたなあ。って、どっかでも書いたなこれ。
JPOP業界をかけ走って約10年後の時期だからこそ作れた曲。
みんながすべて 投げだしても 終わらない 終わりじゃない
4. Liar! Liar! 5 / 5 点
デジタル+ハードロック。
打ち込みと生音が絡み合い、B’zの中でもトップレベルのかっこよさを放つ。
周りから騙され続け、何も信じられなくなった主人公がヤケクソ気味に暴走する歌詞が強烈。
こういう「自分以外の何かに制御されることへの嫌悪感」は、政治学的というか神林長平的というか。神林長平の記事をそろそろ書く時期だろう。このクソブログ、今のところB’zのことしか書いてないしなあ。小説の記事もあげるんじゃなかったのか。
先生はママと 政府は火星人と 警察は悪い人と 僕の知らないとこで とっくに ああナシがついてる それってダンゴウ社会
5. ハピネス 4 / 5 点
優しげなバラード。
どストレートなラブソングで、やましい部分なんかこれっぽっちも存在しない。
人間の弱さを受け止め、前に進もうとするピュアな曲。
だれのためじゃない だけど歪んでない そんなフツーの力で
6. FIREBALL 3 / 5 点
ゴリゴリのハードロック。テンポは遅め。
下ネタを一つ仕込んであるも、歌ってることは真っ当な応援ソング。
CDよりライヴで聴いたほうがかっこいい。
いいかげんな情熱も灰になれ どうでもいい信念も灰になれ
7. Do me 4 / 5 点
ブラスロック。テンション高めで愉快な曲。
お高くとまっていて、その実、自分の能力が露呈するのを怖がっているだけの人間の尻を叩き、「もっと楽しくバカになろうぜ!」と勇気付ける歌。稲葉ソロを聴いてたら、稲葉が自分に言い聞かせてるようにも感じてくる。
ダメ、ダメ ためてちゃだめよストレス 才能もためないでbaby
8. 泣いて泣いて泣きやんだら 3 / 5 点
演歌ロック。
ボロい居酒屋でB’zが人情溢れるメロディを響かせている光景が浮かんでくるかのよう。
日々の戦いに疲れ果てボロボロになっている「あなた」を、浪花節に慰める曲。
またいつか泣きやんだら 僕に笑ってみせてほしいんですけど
9. CAT 4 / 5 点
ロックにシンセに歌謡と、とりあえず豪華絢爛にごちゃまぜた曲。
あっちこっちにふらつく恋人を猫に例え、それに翻弄される男を描く。
1曲目かそれ以上に稲葉の声が高音で、それが「ミャオミャオにゃおにゃお」歌うもんだから、なんとも言えない笑いがこみ上げてくる。
いうこときいちゃう オレもオレだ 今度からはビシビシいっちゃうよ
10. だったらあげちゃえよ 5 / 5 点
陽気なブラスロック。
歌詞はとにかく、やたらめったら詰めに詰め込んでる。
その文字量とは対照的に、内容は「不要なものは捨てまくれ、それでこそ大事なものが手にはいる」というメッセージ性の強い曲。おちゃらけた雰囲気とは裏腹の哲学的な歌詞が面白い。
大学時代に出会った教授から教えられた概念に、「アンラーン、unlearn」というものがある。無理やり日本語訳すると「学び捨てる」というもので、自分が新たな段階へと至りたいときは、今まで得てきた知識を思い切って忘れてしまうのである。
そうすることで自分の古い考え方が刷新され、思考の新たな枠組みが形成されることになり、頭脳の新陳代謝が良くなるとのことらしい。
とはいえ、今までの知識を捨て去るのは怖いものである。これまでの自分を否定することになるのではないかと。だが案ずることはないと、教授も稲葉も言っている。忘れてしまっても本当に重要なモノだけは頭の片隅にいつまでも残っており、それが新たな知識とリンクすることでキラリと光る発想ができるのである。
自分で書いていて意味不明になってきたから、ひとまずここまでにしておこう。ついでに余計なことを言うと、不要なモノをじゃんじゃか捨てるのは実はダイエットにも効く。モノを溜め込まずに吐き出す習慣が心理的に作用して、体内の余計な脂肪分も減らせるのである(どこかのコンビニ本に載っていた内容で、科学的根拠なんてない。だが、僕がこれで痩せれたのは、プラシーボ効果だったかもしれないが事実である。まあ痩せた理由はこれだけではないが)。
次のステップ目指すなら おもいきり身軽になっちゃっていいよプリーズ
11. Shower 5 / 5 点
バラード。レクイエム。
AメロBメロと静かな演奏が続き、サビで死者への懺悔が一気に爆発する。
雨と涙が重ねられた悲哀溢れる情景は、ストレートに心に響く。
ほっとするような微笑みを 心を包み込む海のような言葉を もっとあげればよかった 他人の痛みなど知らずに生きていた
12. Calling 4 / 5 点
王道バラード枠。
イントロとアウトロがゴリゴリのロックで、メインはストリングス主体という変な構成。
歌詞は「絆」を端的に表現している。
この「calling」というのは仲間や愛する人からの「呼び声」か、はたまた「天命」とか「宿命」といったものか。順当に考えれば前者だけど、どちらとも捉えられるし、いろいろ想像しながら曲を聴くのは楽しい。
だれにも真似できない 同じ夢を見よう
関係ないけど、曲名に「call」が入っている歌には名曲が多い気がする。この曲だけじゃなく、稲葉ソロの『The morning call』(そのうちレビューします)、ザ・イエローモンキーのボーカル吉井和哉の『call me』、カウボーイビバップの挿入歌『call me, call me』、メタルギアソリッド・ポータブルオプスのED『calling to the night』……ただの偶然だなこりゃ。
総評 : 5 / 5 点
安定の捨て曲なし。これはこれで真面目にレビューする気あんのかと突っ込まれそう。
次回は少し寄り道して、番外編いきます。