勝手にレビュー9 : B'zの6thアルバム『RUN』

数字と英語に苦しまされる日々。ああ、中学生時代にまで戻って理系としての道を歩みたい…。小学生までは国語や社会より、算数と理科のほうが得意だったというのに。

その点、医者って偉大だなと思いますわ。生物の身体構造を分析するために理系科目を極めるのは当然のこと、患者の精神を取り扱うため文系科目もマスターしちゃうのだもの。ま、そんな彼らの大半が体制側について、つまんないエリート意識をもっちゃってるのは嘆かわしいですが。あ、そんなこと医者に限らずどの職業でも同じことか。ともかく、貧乏人の味方になってくれるエリートがもっともっと増えれば、僕みたいにアホくさい階級闘争を引き起こそうとする野蛮分子が減って、上層と下層がいがみ合うことなく互いに歩み寄れる社会に近づくのになあ。
そもそも、人間が他人を蹴落とし這い上がろうとする傾向の根本原因は、教授が仰っていたように、それだけ自分の生活に余裕やゆとりが存在しないってことが挙げられるだろう。人生の大半を占め、自己実現の手段であるはずの労働が、逆に人間を追い詰め、マルクスが言うところの人間疎外という現象が発生し発達し発情し溌剌し発展しハッテンし。

今作はもろハードロックで、90年代後半以降の、一般的に「B’z的」とされるものの原型が出来上がっています(僕よりも上の世代は、デジタルとハードロックを融合させた90年代のテイストこそを「B’z的」と言うかもしれない)。稲葉の声もだんだんクセが強くなってきており、意地悪な表現をすれば酒ヤケした鶏声になってます。

B’z『RUN』1992年10月28日


1. THE GAMBLER 3 / 5 点

オルガンの長い演奏から入ってこちらを焦らせた後、ゴリゴリのハードロックと管楽器の応酬が待ち受ける。
主人公のギャンブラーは豪快で破天荒。街中で車を飛ばしたり、南国で美女と絡んだりとやりたい放題(こう書くとジェームズ・ボンドみたいだ)。しまいには「どうせ儲け話なら もっと稼いで地球を買い戻せ」なんて言うし。ここら辺は、デヴィッド・ボウイの『The man who sold the world』を意識してんのかな。


2. ZERO 4 / 5 点

イエローモンキーあたりがよくやる、「Aメロ→Bメロ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→サビ」構成の曲。B’zでこういった流れの曲は数少ない。
ハードロックにジャズっぽさを足したような感じで前曲と似た派手な雰囲気だが、歌詞の主人公はややナイーブ。


3. 紅い陽炎 4 / 5 点

シリアスな不倫バラード。「互いのそれを触れ合った 夏の日」、「夜を超えるたびに ふたりただの男と女」と、歌詞がそこはかとなくエロ。
10年ぐらい前、「モンスターハンター2nd」をプレイしていた当時、2chのモンハンスレでB’zマニア達がハンター称号をズバリ「紅い陽炎」にするというのが流行っていた。当然のことながら僕もそれに乗じていたが、その称号の組み合わせ(「紅い」と「陽炎」)を得るには、テオ・テスカトルというなかなか厄介でウザったい強敵を20体ぐらいはぶち殺さなければならず、それに苦労したのを思い出す。


4. RUN 3 / 5 点

曲名の割にはそこまで疾走感があるわけではない。ランニングというより、ジョギングやマラソンが似合う。
後に「銀盤」で再アレンジ。B’zマニアにはそっちのバージョンのほうが好きという人が多いのではないだろうか。


5. Out Of Control 3 / 5 点

歌詞はマスコミ批判。B’z初の社会風刺曲。

ハイテク進み 心の豊かさ遅れる我が国の 如何ともし難いところ なんてどうでもいいか イヤイヤヨクナイナ アーヨクナイ

欠点は、サビの部分がやや寂しいこと。キーボードをもっと目立たせたらよかったのに。それとも単に音質の問題か?


6. NATIVE DANCE 2 / 5 点

ダンスミュージック風味。可もなく不可もなくといったところ。つまり、良くない。


7. MR. ROLLING THUNDER 4 / 5 点

しょっぱなから「僕は真っ赤な大地の聖なるワレメの中から生まれた きっと」とぶっこんでくる、これまた豪快な曲。
メロディと歌詞によって、陽気な海賊達が嵐に立ち向かっているイメージが浮かんでくる。「ワンピース」のOPに合いそう。


8. さよならなんかは言わせない 3 / 5 点

卒業ソング。普通の卒業ソングと違って桜舞う春の風ではなく、夏っぽい港町の匂いが漂ってくる。稲葉が横浜国立大出身だからだろうか。

昔のことだけ輝いてる そんなクラい毎日は過ごしたくない


9. 月光 5 / 5 点

王道バラード枠。しかし前作までのバラード枠とは違い、歌詞は非常に個人的な想いを綴っており、壮大なものではない。だが、それによって稲葉個人の内省ぶりが発揮されている。
終盤になるまで「月」なんて単語まったく出てこないのに、それを想起させる情景描写は見事。

無心に与えあい続けることは 夢の道端に咲く花のようだ

こんなに素朴で綺麗な歌詞は、滅多にお目にかかれない。


10. Baby, you’re my home 5 / 5 点

アコギと手拍子をバックに、ノスタルジーな空気でいっぱいの、今日も一日お疲れ様でした的な歌。
前作の『あいかわらずなボクら』もそうだけど、こういう夕焼けを背景に友人(あるいは恋人)同士がまったり語らうっていうシチュエーションに弱いんすわあ。


総評 : 3 / 5 点

前作からさらに大きく路線変換してきた作品。 点数見りゃわかるけど、終盤の二曲が圧倒的存在感を放つ。二曲とも渋いし。ただ、個々の曲の出来にムラがあり、それが全体としての評価を下げました。
次作は渋い路線をさらに深化してきます。あ、その前に例のクリスマスソングが収録されてるミニアルバムがあったわ。